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こっそりSSを書くスレ

1 : : 2005/03/21(月) 00:55:43
SSを書くスレです。
感想OK。批評は作者の許可を得てからに。
当然過剰な悪口は駄目。
ジャンルは問わず。
無断転載禁止。
過剰なエログロ禁止。


2 : : 2005/03/22(火) 01:33:19
一作かいたのでさっそく書き込ませていただきます。
私の書いた物に対しては感想批評大歓迎です。
(中傷は困るけど)

ジャンル:あずまんが大王
製作期間:一日強


3 :サークル : 2005/03/22(火) 01:37:07
暦は自室で勉強していた。
今までしたことの無い類の勉強なので、勝手が分からず骨がおれる。
必ず一つの答えが出る問題ばかりだった高校までの勉強とは明らかに違う。
ちよちゃんだったら、こういうのも楽々やっちゃうんだろうなあ、などと
高校のときの同級生のことを思い出しながら手を進めていた。
気が付けばもう五月。新しい友人もでき、暦はそれなりに快適な大学生活に入っていた。
ちょっと休もうと思い、暦は鉛筆を置いて椅子から立ちあがった。
目を瞑って体を仰け反らせると、体中を心地よい痺れが突き抜ける。
思わず溜息がでた。我ながら親父くさい。
それにしても。
暦は思う。
智とも一ヶ月くらい会ってないな。ちゃんとした大学生になっているんだろうか・・・。
そういえば高校にいた時もそんなこと考えてたっけ。
夜更けに窓から入ってくるような奴が大学生になれるのか、なんて。
窓の外で震えながらこっちに手を振ってる姿は今でもはっきり思い出せる。
こいつは本当の馬鹿だ、と思ったものだ。今となってはいい思い出だが。


4 :サークル : 2005/03/22(火) 01:37:31
ノックの音がした。
「はい」
暦は返事をする。しかし扉からは誰も入ってこなかった。
またノックの音。暦は気が付いた。
ドアからのノックじゃない。ということは、まさか。
嫌な予感がする。暦は窓に寄り、カーテンに手をかける。
既視感?いや、これはデジャビュなんかじゃない。
暦はカーテンを開けた。暗い中に赤いTシャツが浮かんでいる。
「………お、よみー。早く開けてくれー」
智がこちらに向かって震えながら手を振っていた。
暦は思った。こいつは本当に馬鹿だ。


5 :サークル : 2005/03/22(火) 01:38:37
「なんの用だよ、全く。もう高校生じゃないんだからな」
暦はぶつぶついいながら智を部屋に引き上げてやった。
智は震えながらも嬉しそうに暦の肩を叩いてくる。
「いやあ、久しぶりだねえ、よみくん。なーんか相変わらずって感じだなー」
「お前は退化してんじゃないのか?」
「いいじゃんそれでも!若いってすばらしい」
「ていうかお前、何の用だよ。来るなら電話してくれればいいのに。相変わらず窓から入ってくるし」
「なんていうかさ、インスピレーションが働いてさ」
智はそう言ってベッドに腰を降ろした。
「それに今の時間じゃ玄関から入りにくいじゃん」
暦は時計を見る。午後十一時過ぎ。確かにドアベルを押すには非常識な時間だろう。
だからといって窓から入るのも非常識だよな、と暦は思う。
ここからしか入れないのか、こいつは。
「それにしても、五月になったってーのに、寒いなあ。なんか着てくりゃよかった」
「全く。もっと早く来ればいいのに」


6 :サークル : 2005/03/22(火) 01:38:57
暦は智に半纏を投げてやった後、椅子に腰掛けた。
「何の用で来たんだ?わたしの顔が見たくなった、なんて言うんじゃないだろうな」
「あっはっはっは。なにそれ冗談きついなー」
智は笑いながら半纏に腕を通した。
「話を聞いて欲しいんだよ。よくあるでしょ?世にも奇妙な体験ってやつ」
「はあん、窓から人が入ってきたりとかか?」
「うん、まあそういうやつ。このあいだの土曜日にわたしと大阪が
その不思議体験をしたんだ!」
「あのな、ちゃんと聞いてるからあんまり大声だすなよ」
「わかったわかった。うん、けっこうマジで不思議な話だから、真剣に聞いてよ」
智は咳払いをして話し始めた。


7 :サークル : 2005/03/22(火) 01:40:02
以下は、智の話を三人称でまとめたものである。

四月も下旬の先週の木曜日のこと。
大学のコンビニで偶然出会った智と大阪は二人で構内の生協に昼食をとりに
行くことになった。
「でも本当に久しぶりやなあ。案外会わへんもんやね」
窓際のテーブルにそれぞれランチを持って座ると、
大阪は待ちかねたように話しかけてきた。
「そうだねえ。まあ、学部も違うし、ここは人多いし、仕方ないんじゃない?」
智は日替わり定食をかきこむように食べながら答える。
遅刻しそうだったので朝食抜きだったのだ。
「そうやなあ、仕方ないなあ」
大阪はにこにこしながら頷いている。
食べるのが遅いのはいつものことだが、態度が何となく気持ち悪い。
「とうしたんだよ、ニヤニヤしてさ」
「うん、ちょっとな。その、ともちゃん、サークルかクラブかなんかに入ってる?」
なんだ勧誘か、と智は納得した。どうりで落ち着きのない動きをしているわけだ。


8 :サークル : 2005/03/22(火) 01:40:30
「わたしはまだだけど、大阪はなにやってるんだ?」
「うん。わたしはな、まだ決めてへんねん」
「あ、そーなの?わたしはてっきり何かの勧誘かと………」
「うん、そう。それそれ」
大阪は大きく頷いた。相変わらずとらえどころが無い。
「なんかな、誘われたんよ。新入生集めてコンパするから来てって」
「コンパって、あのコンパ?」
「よう知らんけど、なんか友達つれてこなあかんみたいやねん。
 なあ、お金はいらんみたいやし、一緒にいってくれへん?」
「コンパにねえ………」
確かに大学生活にも慣れてきたし、バイトもまだやっていないので、
時間にも余裕があった。
ちょっと遊ぶのもいいだろう。智は頷いて見せた。


9 :サークル : 2005/03/22(火) 01:40:44
「おっしゃ、行ってやる。わたしにまかせなさい」
「本当?ありがとう、ともちゃん」
「まあね。で、いつ、どこであんの?」
「えっとなあ」
大阪は横の席に置いてあった鞄から手帳を取り出して見せた。
「へへー。これ、いいやろ?これで忘れもんなくなんねんで」
「うわっ、大阪がそんなものを………。お前、刑事志望か?」
「わからんでー?えっと、確かな………。あった、土曜日の午後六時に部室集合」
「え、部室なんてあるんだ。どこの部室?」
「まかせて」
大阪はしばらく手帳を眺めたりひっくりかえしてみたりした後、言った。
「………ちゃうねん」


10 :サークル : 2005/03/22(火) 01:41:40
土曜日の夕方。辺りはまだ明るい。
智と大阪は大学のグラウンドの入り口近くに立っていた。
グラウンド内では、野球やらサッカーやらアメフトやらの格好をした人間たちが
所せましとひしめき合っている。
智は、そうした面々がちらちらと不思議そうな目でこちらを
眺めてきているのに気が付いた。
「大阪、わたしたち、なんか場違いっぽいな」
「あー、ともちゃんはええよ。そんなに違和感ないし」
智は大阪の服装を改めて見てみた。
真っ白なワンピースに桃色のカーディガンを羽織っている。
彼女なりに格好つけたのだろう。
智はといえば、ジーパンに半袖のTシャツと、普段と全く変わらないスタイルだ。
どちらにしても、運動場の前に立つときの格好ではない。
もしかしたら、男を待っていると思われているのかもしれない。
「てかさー。ほんとにここにいたら迎えに来てくれんの?」
「うん。………いや、ほんまやで?」
大阪は智の懐疑的な視線に気が付いたのか、慌てて言い足した。
「だってこの手帳にも書いてあるし………」


11 :サークル : 2005/03/22(火) 01:41:54
「だってその手帳じゃなあ。まあいいけど、そろそろ来てもいい頃なんじゃない?」
智は腕にはめてある時計を見た。六時二十分。
「大阪に似て時間に遅れるやつが来るとみた」
「えー、わたしは朝だけやん」
「そう、その通り。よくわかってんじゃん」
それにしても遅い。こんなに待つのなら、もっと遅く来ればよかった。
だいたい、こんな美女を相手に遅刻するなんて、どういうつもりだろう。
もしかして焦らしているのかもしれない。
焦らす、か。それもなかなか………。
智は自分の想像がみるみる膨らんでいくのを自覚した。
いやいやいや、焦らすのは古来から女の武器じゃないか。
女が焦らしてこそ男も燃え上がるというものだ。
ルパンも、不二子が焦らさなかったら、
『ふっじこちゃーん』
なんていいながら服を脱ぎ捨て飛び込んだりはしなかっただろう。
「あ、ともちゃん。来はった」
智は思考を打ち切り大阪のゆびさす方向を見た。


12 :サークル : 2005/03/22(火) 01:42:16
春だというのにジャンパーを着たその男は、雷同(ライドウ)と名乗った。
「滝野さんっていうんだ、よろしく」
「よろしくお願いします」
「いいよ、敬語使わなくても。春日さんは久しぶり」
「こんにちはー」
などと、形式的な挨拶を交わしながらしばらく歩いていると、
コンクリートの長屋のような建物が見えてきた。
暗くて人気がなく、薄ら寒い雰囲気だ。
トイレがすぐ側にあるのが、建物を使用している人への嫌がらせに見える。
雷同はその建物の一角をゆびさして言った。
「あそこ、一番奥なんだ。
扉にワンダーフォーゲルって書いてあるけど、あれは前ここを使ってた部のことで
今は僕たちのサークルが使わせてもらってる」
「そういえば、どんなサークルなんです?」
重要なことを聞いてなかったな、と思いながら智は尋ねた。
「まあ、平たく言えばイベントサークルだね。詳しい説明は中でしよう」
雷同はそう言って口を濁した。


13 :サークル : 2005/03/22(火) 01:42:57
部室は五畳ほどの広さで、蛍光灯の光に満ちていた。
まず智の目に入ったのは入り口からみて正面にある大きな冷蔵庫だった。
ドア近くには靴入れ、部屋の真ん中に一メートル四方のテーブル、それに
冷蔵庫の隣の食器棚など、なかなか所帯染みた雰囲気だった。
床には黒い絨毯が敷き詰められており、そこで一人の男が座って本を読んでいた。
ポロシャツにジーパンのその男に、雷同が話しかけた。
「おい相原(アイハラ)、なにやってんだ」
相原と呼ばれた男は、面倒くさそうに顔をあげ、言った。
「ああ、コンパに来た子たちか。まだ空いてるから適当に座ってて」
「こいつは相原っていって、俺と同回生なんだ。
この子たちは春日さんに滝野さん。てか相原、もてなせよ。客なんだから」
「僕は座ってもいいと言った。他にすることがない。始まる前にビールを飲んでも
 いいのか?」


14 :サークル : 2005/03/22(火) 01:43:12
「………こういう奴でね。まあ、適当にくつろいでて」
雷同は苦笑いを浮かべてこちらを見る。
「あの、二人だけでやってはるんですか、このサークル」
大阪が尋ねた。
「まさか。あと、男が二人と女が三人いる。みんなまだ電車の中だろうけどね。
 あいつらは理学部だから別の学舎なんだ」
雷同はそういって時計を見た。
「でも、うん。そろそろ来るころだな。俺は迎えにいってくるから、ここにいて。
 相原、ちゃんとビールの準備しとけよ」
「わかった。今する」
相原は本を置いて立ち上がり、雷同は出て行った。


15 :サークル : 2005/03/22(火) 01:43:33
「あの、手伝いましょうか?」
大阪が食器棚を覗いている相原に声をかけた。
智は、わたしたちは客なんだから、んなことしなくていいんじゃないの?と、
言おうとしたが、その前に相原が、
「じゃあ冷蔵庫の中から缶ビールを十三本出して」
と言ってしまった。客に手伝わすとは何事だ、と思ったが口にはださない。
高校時代なら確実に文句を言っていた。
わたしも成長したな、と智はひとりでほくそ笑む。
冷蔵庫は三百五十ミリリットルの缶ビールで埋まっていた。
智はその中から十三本、無造作に取り出して大阪に渡す。
大阪はそれをテーブルに並べていった。
「出した?じゃあ、これに入れるから」
「うわ、なんですそれ?」
智は相原が出した二つの白い陶器の瓶を見て、思わず吹き出した。


16 :サークル : 2005/03/22(火) 01:43:44
それは大きなポットのような形で、三リットルは入りそうだった。
側面に何かを引っ掛けることのできるでっぱりがあり、
飲み物を入れる所と出す所の両方に蓋がついている。
智が笑ったのは、それぞれのでっぱりに、トイレ等にある男性、女性を示すプレートの
ミニチュアがひっかけてあったからだ。
「ポット」
相原は無愛想にそう答えた。
「いやいや、そうじゃなくて。なんでこんなのがついてるんですか?」
「男子用と女子用に区別するため。次はビールをポットに入れてくれないかな。
 男用には八本分、女用には五本分入れてね」
なんとも人使いの荒い男だ。智はしぶしぶ缶を手にとり、作業にとりかかった。
相原は食器棚からジョッキを出している。
それにしても白い陶器の入れ物にトイレのマークとは、いいセンスをしている。
智は男のプレートがぶらさがっている方のポットの蓋を取り、ビールを注ぎながら
そう考えていた。


17 :サークル : 2005/03/22(火) 01:44:03
ビールをポットに入れ終わり、それぞれに蓋をすると、智はトイレに行きたくなってきた。
「ちょっとトイレ」
誰とはなしにそういうと、相原も立ち上がってついてきた。
「僕も行こう」
「なんです?場所ならわかりますよ」
「そうじゃない。僕もトイレだ」
「覗くんじゃないでしょうねー」
相原はじろりと睨み付けてきたが、何も言わなかった。さっきからノリの悪い奴。
靴を履き、外に出てみると、辺りは本格的に暗くなり始めていた。
腕時計を見ると七時五十分。ずいぶんと待たされたものだ。
「焦らすのは女の専売特許なのになー」
「え、何か言った?」
相原が大声で聞き返してきた。右手に小瓶を持っている。
「いえ、何でもないですよ。それ、なんです?」
「睡眠薬」
相原はこともなげに言った。
「僕はね、酔ったら眠れなくなるんだ」


18 :サークル : 2005/03/22(火) 01:44:18
「へえ、そうですか。てか声大きすぎません?」
「大丈夫。ここらはあんまり人がいない」
ここらはあまり人がいない。智はその言葉に背筋を舐められたような感覚を覚えた。
初対面の人間と、こうして暗い中でいるのが急に恐ろしくなってきた。
そういえばこの学校にはよく変質者が出るとか、レイプサークルがあって危ないとか、
悪い噂を聞いたことがある。何故今そんなことを思い出すのだろう。
「あれ、どうしたんだろう」
相原は相変わらず大声で言う。
「え、なになになに、どーしたの?」
智は心中を悟られないようにと、大声で返した。
「ねえ、滝野さん。誰かいるのかな。声がするような」
智は耳をすませた。確かに誰かが喋っているようだ。雷同の声も混ざっている。
「はーん。そういえば雷同さんの声がしますなあ。


19 :サークル : 2005/03/22(火) 01:44:30
「あ、雷同ね」
相原は納得したように言った。案外臆病なのかもしれない。
手早く用を足し、外に出ると、丁度雷同たちが近づいてくるところだった。
よっぽどゆっくり歩いていたらしい。彼は、男を二人連れていた。
背が高いのと低いののでこぼこコンビだ。
雷同が話しかけてきた。
「あ、滝野さん。一人でここまできたの?」
「いえー、相原さんと一緒です」
「そう、ここにいる」
相原が男子用トイレから出てきた。
「あれ、女は?」
「実験が長引いてるらしい。まあ、中に入ろう」


20 :サークル : 2005/03/22(火) 01:44:51
部室に戻ると、大阪に女性部員が遅れることを伝えて、
先にコンパを始めることになった。
「その前に紹介だ。この子たちは新入生の春日さんと滝野さん。
 こいつは彭(パン)、あっちのちっこいのが遠藤(エンドウ)だ」
雷同の紹介に、
「彭です」
と背の高い方が言った。明るいところで見ると、なかなかの美形だ。
一方の遠藤は少し頭を下げただけで、顔もよく見えなかった。
「もうビールいれてもいいの?」
相原が言うと同時に宴会が始まった。
でこぼこコンビがスナックを沢山持ってきていたので、それを配り、
テーブルの周りに座る。
雷同が大阪と智の間にある女のマークのポットを指差して、
「女の子はそっちのポットから注いでね」
と言うので、智はポットの蓋をとり、自分のジョッキにビールを注ごうとした。
「ともちゃん………」


21 :サークル : 2005/03/22(火) 01:45:02
言われて顔を上げると大阪がジョッキの底を見ながら目を見開いている。
「これ、虫眼鏡みたいやで」
「ばーか。こーした方が面白いよー」
智が自分のジョッキの口を自分の顔の前にかざしてみせると、
大阪は感動したように唸った。男たちは皆、ジョッキ一杯まで注いでいる。
「さてさて皆さん。今宵も恒例の男子一気飲み大会を開催いたします!」
雷同がそう叫び、智は間髪入れず叫び返した。
「いえ〜!まってました!」
「我がサークル選りすぐりの面々が面子を賭けて戦います!
 一杯三・五デシリットルで、何杯いけるでしょうか。女の子、応援よろしく!」
「よっしゃー。いのちすててこーい!」
やっと楽しくなってきた。こうでなければいけない。


22 :サークル : 2005/03/22(火) 01:45:12
「じゃあ一杯目、レディ、ゴー」
男たちはみるみるうちにジョッキを空にした。
「すげー!やるー!」
「がんばれー」
智と大阪がそう言うと、男たちは早速二杯目を入れようとした。
「あれ、もうねえぞ、新しいの持って来い。冷蔵庫に入ってる」
「よし、今夜はマジで負けん」
「なー、大阪。見てるだけってのもなんだし、わたしたちも飲まない?」
智は男たちが楽しそうに騒ぎはじめたのを見て、自分も飲みたくなってきた。
やはり男といるときは酒をいれたほうがテンションを維持できると思う。
「あー、そうやな。飲もか」
大阪は案外あっさり頷いた。今日は久々に楽しくなりそうだ。


23 :サークル : 2005/03/22(火) 01:45:34
「はっははー!これは遠藤のカメラだな!エンドウカメラ、なんちゃって、はははは!」
智は最高に愉快な気分だった。
「よっしゃー!撮りまくってやるー!」
「つっくりっましょー、つっくりっましょー。あ、あれ?こ、これは………」
「おーさかー、なにやってんだー!」
「えーとな、ともちゃん。これたべてー。ブレンドおかし〜」
「よっしゃー!………うっげまじー!なんだーこれー!罰として酒のめー!」
「えー。わたし、そんなはしたないポットから注がれたものなんてよう飲めへん」
「なにー、わがままはゆるさーん。あれ、もうないのか。ふふふ、されなら男の
 ポットからいただくとするかー!ほら、まだこんなに………」
「あー、あかんて、ともちゃん!そんなことしたら大変なことになるで。
 具体的にはな………。い、命が、その、あぶない」
「なにー!いのちが?じゃあ雷同たちはもうしんでんのかー?」
ばっかでー、と思いながら周りを見ると、智と大阪以外は全員倒れていた。
「え?………大阪、まじで寝てるぞこいつら」
「へ?」


24 :サークル : 2005/03/22(火) 01:45:45
大阪も周りの様子に気付いたらしい。急に真面目な顔になっていった。
「これは事件や」
「おおっ。殺人事件か!」
「そうや。わたしたちが解決せなあかん」
「よっしゃ。さっそく現場写真とってやる!」
智は持っていたカメラを構え、手当たりしだいに撮り始めた。
「おーさか、撮った!」
「うーむ、息をしとる。ともちゃん、しぼうすいていじこくは?」
言われて智は時計を見て、驚いた。
「やっべ、もう十時じゃん。そろそろ帰らないとやばい」
「え、ほんまに?じゃあかえろーか」
「そだな」
二人は靴を履いて外に出た。外はもう暗くなっていた。
涼しい風が顔をなぶり、少しずつ酒気を抜き取っていく。
「あー。なんかさ、みんな倒れてたけどほっといても大丈夫かな?」
智は気が付いて言った。
「あとから女の先輩が来るとか言ってたけど、
 一応事務かどっかに連絡したほうがいいかも」
「こういうときは警察やで。身元がばれんように公衆電話からかけるんや」
「おー、なるほど。頭いいな、あんた」


25 :サークル : 2005/03/22(火) 01:46:20
校外へ出てしばらく行くと公衆電話が見つかったので、
智はさっそくテレフォンカードを入れ、110をダイアルした。
「あっもしもーし。いまB大Bキャンパスの元ワンダーフォーゲル部室内で、
 数人の男が酔いつぶれていまーす」
「失礼ですが、あなたのお名前を教えていただけますか?」
「あ、わたしの名前ね、うぐぐ………」
大阪が智の口を塞いだ。
「匿名希望やで、ともちゃん」
「とも、さんですか。お連れのかたは?」
「うひゃー」
智は電話を切り、テレカをとった。そして今更これが必要なかったことに気付いた。
「ばれた」
「あー、ごめんな。受話器を押さえればよかったんやなあ」
「まあ、いいって。ほら、人の口に戸は建てられないっていうじゃない」
「………そっかー、そやな」
「そうそう。あっ!」
智は自分の荷物以外のものを肩に担いでいるのに気が付いた。
「カメラもってきちゃった。勝手に写真とっちゃったし、フィルム買ってかえさないと」


26 :サークル : 2005/03/22(火) 01:46:34
「あー。じゃ、じゃあ、フィルムはわたしに頂戴。欲しい」
大阪に抜いたフィルムを渡しているうちに、ようやく酔いが醒めてきた。
途端に辺りの景色が見えてくる。二人は大学から駅までの途中の道にいた。
駅まで少し距離があるので全く人気がなく、薄気味悪い。
智は早く帰りたくなってきた。
「それにしても今日はいろいろあったな」
「うん。そうやね」
大阪はまだ酔っ払っているのか、声が震えている。
「ごめんな、ともちゃん」
「え、なんで?」
大阪の顔がみるみるゆがんだ。両目からいきなり涙がこぼれ落ちる。
「ごめんな、ほんまに、ごめんなあ」
「ど、どうしたんだよ、大阪。おい、くっつくなって。かえろーぜ」
これ以上こんなところにはいたくない。大阪は酔っ払っているから
なんともないかもしれないが、こちらの身にもなってほしい。
智が家に帰れたのは、突然泣き出した大阪を電車にのせ、家に送り届けてからだった。


27 :サークル : 2005/03/22(火) 01:48:08
「………そんな訳でその日は終わったんだけど、月曜日にカメラを返しにいったら、
 なんとその部室はワンダーフォーゲル部が使ってたんだ!
 わたしはそのあと、事務に行って雷同とか相原とかの名前を調べてもらったんだけど、
 わたしがあの日会った人間はいなかった。あのサークルは一体なんだったのか?」
智はそこまで言うとぶるりと体を震わせ、暦にぐっと顔を近づけた。
「な、不思議な話だろ?」
「ひとつ聞いておくが」
暦は智の顔を押しやりながら言った。
「大阪は今どうしてるんだ?」
「ああ、不思議だって言ってたけど、調べたりする気はないみたいだね。
すぐどっか別のサークルに入ったよ」
「ふうん」
「なんだよ、ふうんって。めちゃくちゃ不思議な話じゃん。
もっと驚いてくれると思ったんだけどなあ」
「お前、ほんとに何にもわかんないのか?」
えっ、と智は身を仰け反らせた。
「なんだよ、そのなにもかも判ったような言い方は。ば、馬鹿だと思ってるだろー」
「何年も前から思ってるよ。いいか、お前がやるべきことを教えてやる。
もうその変なサークルを調べるのはやめろ。危険だ」


28 :サークル : 2005/03/22(火) 01:48:42
「な、なんだよそれ。意味わかんないぞ。もっとちゃんとした理由を言ってよ」
「理由ね」
暦は椅子から立ち上がった。変な姿勢で座っていたせいか、腰が痛い。
「そりゃ、そいつらが嘘をついてたからだ」
「嘘?」
「そう。六時に迎えに来ない、女の部員は来ない、しかも部室は無断借用らしい。
これだけ嘘が揃えば怪しく思うのは当然だと思うがなぁ」
「うっ。で、でも」
「あのなあ………」
暦はクローゼットを開いて中からコートを出しながら、
「大学ってのは危ないサークルとかがゴマンとあるんだ。そのくらい知ってるだろう?
 偽名使ってる時点で危ないって思わないのか?」


29 :サークル : 2005/03/22(火) 01:48:54
「そ、それは」
「まあ、なんともなくてよかったよ」
暦はうなだれる智にコートを投げてやった。
「もう遅いし、帰ったほうがいい。そのコート、今度の日曜に使うからそれまでに返せよ」
智が窓から暦のコートを着て帰ったあと、暦は一人机に腰掛けた。
何故、智と大阪は無事に帰れたのか?
何故、あの男たちは全員眠りこけてしまったのか?
(………考えるまでもない)
暦はしばらく迷った後、携帯電話を手に取り、ゆっくりとダイアルをした。

おしまい


30 : : 2005/03/22(火) 01:56:12
おわりです。
長すぎたのは次からどうにかしないと・・・。


31 :名無しじゃない・・名無しじゃないぞぉー! : 2005/03/22(火) 09:30:31
推理小説っぽくて良いですねえ。

私も何か書こうかな。


32 :サークル(蛇足1) : 2005/03/22(火) 15:26:36
コール音が耳に響く。暦は大きく息を吸い込んだ。
「………あ、もしもし。水原だけど、久しぶり」
「え、よみちゃん?久しぶりやなー。なに?」
一ヶ月ぶりに聞く大阪の声は全く変わっていなかった。少なくとも、声の調子は。
「うん、ともにさ、聞いたんだ。前の土曜日のこと。大変だったな」
「え、ああ」
受話器の向こうからの声が途切れる。暦は続けた。
「ふたつ、確認したいことがあるんだ。答えてくれなくてもいいけど、気になって」
「………」
大阪は黙っている。そのことがますます暦に自分の予想を確信させた。
「フィルムは、もう捨てた?」
無言。暦がもう一度同じことを聞くと、やっと返事が返ってきた。
「捨てた」
「………そうか」
暦は相手の様子を窺うように黙った。たまりかねて大阪が話しかける。
「それで、二つ目は?」
「………今入ってるサークル、楽しいか?」
「ああ、そうか」
受話器の向こう側からため息が聞こえてきた。
「分かってしもたんか」
「あんな連中とつき合うのはよした方がいい。言うことはそれだけだ。じゃあ」
「待って、なんで分かったん。もしかしてともちゃんが?」
「あいつは何も分かってない。でもまあ、その観察力には脱帽したけどな」
「じゃあ、なんで。あの、説明してくれへん?」
「客観的に見ても、主観的に見ても、そうとしか思えなかったからかな」
「あ、あの。できればわたしにもわかるように………」


33 :サークル(蛇足2) : 2005/03/22(火) 16:19:46
「じゃあ、具体的な理由を挙げていこう。
1、帰り、電話するときに本名を出したがらなかった
2、そもそもこのサークルに智を誘ったのは大阪だった
3、智が男用の酒を飲もうとするのを止めた
4、智が撮った男たちの写った写真を回収した
 まあ、こんなところだ。一つだけなら大阪らしい奇妙な行動として認められるかもしれないけど、
 こんなにあったら、もうわざとしか思えない」
「よみちゃん、どこまで知ってんの?もしかして………」
「はぼ全部分かったつもりだ。お前が睡眠薬の入ったポットを入れ替えたことも含めて」
そう、ポットは入れ替えられていた。
そうでなくては、男たちが二杯目のビールを男用ポットから足そうとして足りなかったことへの説明がつかない。
「なんや、よみちゃんまるで天才やな」
ほお、と感嘆したような声が受話器から流れてきた。
「じゃあ、わたしがポットをいつ入れ替えたんかも、分かってんのん?」
「分かってる。というか、入れ替える機会があったのは一回だけだった。
 ともと相原がトイレに行った時だろ?
 入れ替える、と言ってもただトイレのプレートを外して付け替えるだけでいいんだから
 それなりに余裕もあったはずだ」
「正解やで」
大阪はそう言ってくすくす笑い出した。
「実はな、部室の外で他の人たちが、作戦たてとったんよ。
 そこにともちゃんが出てったら大変やから、あの人は付いてって大声を上げたんや」
「もう手は切ったのか?」
「切った」
大阪は即答した。
「今はちゃんとしたサークルに入ってる。ともちゃんには悪いことしたとおもてるよ」
「そうか。手は切ったか」
ならいい。暦は体中の緊張が解けていくのを感じた。
「ともは勉強になっただろ。何もなくてよかったよ。
 大阪が防いでくれたようなもんだ」
「わたしが仕掛けたんやけどな。………ともちゃん、許してくれるやろか」
「大阪は結局、あいつらにともを売れなかったんだ。
 ともだって分かってくれるんじゃないかな」
智だったらきっと許すだろう。暦には奇妙な確信があった。

「ところであれは、よく噂になるレイプサークルなんだよな?」
暦は聞いた。
「女を使うなんて、下衆な奴らだ。ダシャレなんか使って」
「ダジャレ?何なん、それ?」
「気が付かなかったのか?名前だよ名前。
 雷同、相原、彭、遠藤。
 Raidou
 Aihara
Pang
Endou
 頭の文字を組み合わせてレイプ、だ。全くふざけた奴らだ」


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